十一月十六日(月)

博論後に何をするかをここ1年ずっと考えて未だに決定打はないが、現在は「ライフヒストリーを聞いて重要な経験を抜き出す」形式の研究アイデアしか浮かばなく、読んでいる論文もその形式にしたがっている状況からの脱却、がテーマになっている。研究の主題よりも方法論の問題。方法としてインタビューしか使えないというのはこの先の研究可能性をとても狭めるものだろうし、質的研究の専門家としても片手落ちだろうから、「数年」ではなくて「数秒」の相互行為を分析できるようになりたい。エスノメソドロジーや会話分析は社会学で発展してきた方法ながら学習科学でもニーズがあり、自分が身につけるには最適だろうと長年思ってきたが、やっと勉強する気運が整ってきたという感じがする。

相互行為分析をやっていて「これは面白いぞ」という論文に立て続けに出会っているのが大きい。まずマスコミ学会で『楽しみの技法:趣味実践の社会学』のワークショップを聞いてふんふんと思い、その後大島先生にICLS投稿セミナーで教えてもらったMa & Hall (2018) を思い出して冒頭を読んでみたら「アンサンブル学習」という概念の重要性に膝を打ち、そしてIvaldi et al. (2021) のパフォーミングアーツレビュー論文を読んで――自分のフラメンコ経験を想起しながら――確かにEMCA研究を蓄積していくと現象が捉えられるようになっている!ということを実感した。特に「訂正」は学習にとって大変重要な実践だと思うので、ここを掘り下げたいという気分になっている。

杉山