八月二十日(火)

 友人宅で目覚める。モーニングを駅で食べてからとりあえず名古屋港に向かうことにした。最近は港湾という空間が気になっている。名古屋海洋博物館を訪れたのだが、そこではじめて伊勢湾台風の際に、名古屋港に貯蔵していた丸太が台風によって市街地へと向かい多くの被害を生み出したということを知った。都市において木材は循環しているし人を殺めることもある。昨日、堀川沿いを歩いていて木材加工業者の連なりを眼にしていたからなおさら印象深く感じた。

 そこから一気に豊田市へと向かい、地方都市感120%のショッピングモールでスガキヤラーメンを食べた後、尋常じゃない湿度のなか坂を登って豊田市美術館へとたどり着く。Taryn Simonの一連の展示がすごく良かった。人体凍結保存装置の写真を眼にした際に、これもまた冷蔵・冷凍技術が可能にした想像力なんだということに気づいた。こうしたオカルトじみた考え方も20世紀シカゴにおいて生み出された牛肉・豚肉の冷蔵技術の延長線上にあるとさえいえる。丘の上にある美術館は本当に静謐で美しくて夏に来たことを決して忘れられない。

 ホー・ツーニェンの「旅館アポリア」に割けた時間が少なかったのが本当に残念だったが、そのなかで一番印象的だったのは轟音で襖、というより和室全体が振動するという体験であり、これが戦争だ。

 名古屋駅に戻って友人のお父さんが必死にというか半ば狂気じみているほどに勧めていたあんかけスパを予想以上にかなり美味しくいただいて満腹のなか新幹線で帰京した。友人が高校生時代に岐阜に星を見に行った話がとてもよくて何度も反芻した。

 中川