七月十四日(土)

昨夜22時半頃に田端を出た僕らは、恵比寿で煙草をふかしていた。LIQUIDROOM周辺には徐々にモード系の服を纏った人々が集い出している。ばったりとすれ違い一人仲間が増える。深夜を回る頃にライブハウスの中に入る。入場が始まっていくのを見ながら、ラウンジで佇む。「酔っ払いに囲まれてサイアク」と言いながら一人やって来る。「お腹すいた…鯖寿司食べてくる!」と言いながらまた一人が来る。

五人になった僕らは階下に降りてホールに入る。SEに身を委ねていると「はじめましてー。え、先輩?」ともう一人が加わる。六人で佇む深夜25時、落ちた照明の中からKOHHがステージに飛び出てくる。ヤーヤーヤーヤー。途端にホールはモッシュの嵐だ。Living LegendやDirt Boys、Family・・・コールアンドレスポンスで押し通した前半から、痛切に自己の生い立ちを歌い上げる後半へとパフォーマンスは展開した。後でよっしーが「今流行りのエモラップみたいなところがある」と言ってたけれど、確かにそうだと思う。トラップからロックベースのヒップホップに変貌している。

ステージ転換の合間にTimeOutでビールを飲みながらすみっちの愚痴を聞く。未だにテレビの時代から抜け出さずに印象論だけでコンピュータとインターネットについて語り続けてしまう世代への疲弊感。真っ当な感覚で受け止めている。入って早々の7月にそれに出会ってしまったのは不幸なことである一方で、ちゃんと助け合えばそれに押しつぶされずにやっていけるのではないかと期待もする。

「もう始まってる!」とすみっちに急かされてホールに入ったけれどまだリハーサル。下手側スピーカーの前が僕らの定位置だった。また佇む6人。深夜28時、一度閉じた幕が開くとyahyelがビートを刻み出す。KOHHがロックならyahyelは明らかにダンスミュージックだ。今度はモッシュは起こらない。めいめいが踊りながらソウルフルなボーカルと映像の中に溶け込んでいく。「もう帰れないなら遊ぼうよ」と導かれて、あっという間に終演まで踊り続ける。sくんが「yahyelの方がノレた」と言っていた。

LIQUIDROOMを出るともう外は青白くなっていた。「朝ご飯食べようよ」とすみっちが言い、6人で渋谷まで歩いて行く。みんなライブの感想が口々に出てくる。朝靄の中からだんだん渋谷の摩天楼が見えてきた。

円山町ユーロスペースの向かいにある花魁に流れ着く。2階の座敷に通してもらう。らいちゃんやチャーリーくんは魯肉うどんを食べていたけれど、僕はおにぎりと味噌汁をもらう。シジミ出汁が染み渡る。よっしーのコメント力の高さをみんなでたたえ合う。

朝日が降りそそぐ中、文化村通りを駅の方へ向かっていく。百日紅のピンクの花が鮮やかに映えていた。

 

杉山