十一月二十二日(土)

Lindwall & Ekström (2011) の序盤を読んだ。かぎ針編み講座におけるインストラクションの相互行為分析である。初歩の初歩の編み目づくりの技能を「manual skills」と呼び、私たちが社会のメンバーとしてふるまうことを可能にするささいな技能――ネクタイを結ぶ、卵を割る、クラッチを切る――として位置づけている。こう言われると、趣味は専門的な余暇活動だといいつつも、日常的な制度の基盤に成り立っている――特に「入門」や「体験」の場面ではそれが見て取れる――と思えてくる。

また編み目のつくり方に関する一対多の教授場面で、要求、実演、訂正がいかに組織化されているのかという分析も面白かった。教師は話し始める前にフィラーを入れることで生徒の注目を集める(それによって聞き逃しのないようにする)とか、「編み目を10個つくってみて」という要求は生徒が要求を受け入れるかどうかが気にかけられている「依頼」ではなく、言ったとおりの動作ができるかどうかが気にかけてられている「指示」であるとか、目の前で生徒が編み目をつくっていることで「上手く編み目がつくれない」生徒の存在が可視化され理解可能になることが、教師が実演の再開をし始める際の資源になるとか。フラメンコの練習を想起しながら読むと、確かに見通しのよい記述が与えられることのよさを感じる。

この論文を読んでいると、趣味を始めることには困難はなく、日常から専門領域への移行がスムースに行われる(地道な訂正の積み重ねによってそれが達成される)ように思えてくる。これまでの趣味研究で課題だと感じていたことと、こうやった相互行為分析を学ぶことで見えてくるものを付き合わせることで、どんなトピックが浮かび上がってくるか。それが出てくれば博論後の研究の焦点になるだろう。それを期待して相互行為分析の勉強を続けたい。

杉山