九月七日(金)

早朝から健太郎は出勤している。私も起きてさっさとグラフィックに取り掛かる。思っている以上に調査が必要な箇所と、言葉以外の詳細な表現が必要。


この辺は、翻訳という仕事に近いなといつも思う。


翻訳家は、その分野の経験や予習なんかからピッタリくるボキャブラリーを見つけてくれるように感じるけど、グラフィックもその描き手の経験してきた日常が出る。トランジションタウンの内容を描いていると、つい自分の大学時代の活動と重なって、いくつかそれを反映させた。小水力発電での地産地消エネルギー、地域の人からの聞き書き、こぎん刺しという刺し子をおばあちゃんから習ったこと、もうその地域に一人しかいない炭作りの伝統技術についてのインタビュー。その頃やっていたことが蘇ってきて、新たに意味付けされていくのを感じた。

受け渡しのために急いで新宿へ向かう。改札越しで絵を広げることになるとは思っていなかった。

そのまま目黒へ。ぐーーーっと集中していたので、熱が頭と首周辺にこもっている感じがして、肩がバキバキ。少し気軽で動的なことがしたくてホチキスどめ作業。そのままタリーズで明日のワークショップに向けてスライドを作る。

健太郎と二人で夜な夜な定食屋へ。美味しい。作業に戻り、帰宅したのはもう一時近くで二人ともへとへとだったけど、帰ると松本さんがいた。思いがけず彼ら二人が、怖い話の動画を見るよね、どんなん見る?、と盛り上がっていた。私はあんまり観たくない。

家に他の文脈を持ち込んでくれる人がいるとホッとする。疲れを共有した私たちが電車でしりとりをしていた時よりグッと癒された気がする。こういう、他の文脈を持ち込んで風通しを作ってくれる人をどう暮らしの中で担保していくか、これは長年向き合って行きたいことだし、その価値が十分にあることだよと声を大にして言いたい。誰に向けてかはよくわからない。

 

ゆり