四月十八日(水)

 いつもより早く起きて本郷へ。紅茶とパンを頬張りながら東京を歩く会の準備集会。深川で遊女とアートの文脈がつながる回路を探す会になりそう。昼は久々に万定でカレーライスを食べる。

 研究室に戻ってきて、次の論文の原稿書き。定期的に日記を書いているせいなのか、研究計画がスマートになったのか、前の論文より文章がこなれた気がする。
 4限ヴァナキュラー芸術論は概念規定の話題。つくづくアマチュアオーケストラが研究対象として面白いと思うのは、「趣味」である一方で「fine art」であるという、カテゴリカルに微妙な位置取りにある。ある意味ではヴァナキュラーであり、ある意味ではヴァナキュラーではない。だからアマチュアオーケストラに照準を定めようとすると、用いる概念装置の特性が浮き彫りになる。文献担当は『ディスタンクシオン』をあてがってもらった。
 
 夕方から高田馬場に出てフラメンコ。1時間でグアヒーラの振りを思い出す。帰りがけにイタリア料理屋に寄る。山椒で味付けた筍とベーコンのスパゲティがくせ者だった。始めは意気揚々と食べていたが、そのうちどうにも塩辛くなってきて箸が止まる。分量間違えているんじゃないかと思ったが、さくらちゃんに食べてもらっても何ともないと言う。おかしいと思って調べると、山椒で舌が痺れて味覚が敏感になったせいらしい。休み休み食べると結局美味しかった。
 
 高田馬場から『ラディカル・オーラルヒストリー』を読みながら帰ってきたが、1章だけで大変良い本だと分かる。すごい本だという前評判はたくさん見たけれど、それに違わない。生活のなかの歴史実践をそのまま歴史家の仕事として受け止めることで、実証史学もナラティブ派の方法論も問い返す。フィールドワークに基づいて概念的な探求ができるのは優れた仕事の証だ。水越先生の「重い思想的な悩みを抱えながら、軽いフットワークで動ける人」の体現。こうありたい。
 
 杉山