八月三日(土)

一週間が波のように過ぎ去った。気がついたら日記を一日飛ばしていた。

朝から起きて仕事に行く。休日出勤が板についてきた。
いつもなら上司がいないからこそじっくり時間をかけられる仕事を選んでするのだが、今日もそんな感じになった。

今進行中の案件の書類を整えた後、検査の準備をこまごまとする。
お昼ご飯にカップ油そばを食べた。焼きそばとの違いが判らん。

昼食後は時間のかかる調査ものを行った。別の担当がやるものだが、来週のことを考えると全く時間がなさそうだし、総括という立場なので出来る作業はこっちでやろうと決める。年上に対してサポートと指示を与えるということへの心理的障壁の乗り越え方に悩む。適度な距離感が一年半働いても分かっていないのが最大の問題だ。

その後、時間のかかる調査案件に手を付けたが、直近書類が見つからず頭を抱える。前前任者に電話する必要があるかもしれない。

家に帰る時、いつもは通らない道を進む。ハンドルを転がしながら窓の外を見ると、空には明るい層と暗い層がはっきりと裂け目を作っていた。
変な光景だと思っているうちに、泣きそうになった。結局決心がくじけたことに情けなく思う。

夜、部屋の中はちょっとむし熱い。でもクーラーをつけるほどではないから扇風機でしのぐ。

S




八月二日(金)

 高嶋さんの本が昨日発売されたはずだから書籍部に行って確認した。これが自分の修論とか科研にかかわってくるかとも思っていたけど意外とローカルな場所の話が薄くてあてが外れた感じだ。そこからあわてて神田須田町のことを調べているとどうやらあの場所にはもともと青果市場があったらしいということがわかってくる。それに『神田市場史』というものがどうやら図書館にも所蔵されているらしい。急いでかき集めて情報をまとめていると築地とか大井ふ頭とかとの接点も見えてきてこれを軸に東京の変化が記述できるような気がした。市電の話はサブでメインはこっちにしよう。

 そこまで決めてから久しぶりに千代田区立図書館に向かって地域資料をさらっていく。そのうちの一つがVHSの映像資料でビデオの物理的な軽さにびっくりしてしまった。その合間に八馬さんのドボク本にも目を通していたが、水門エレベーターのようなおよそ考えられないスケールの構造物がたくさんあって眼を丸くした。というかここ数年で一番旅情をそそられた瞬間だった。

 中川

八月一日(木)

8月だな。

今日は9時に起きた。紅茶を飲みながらUTalkの打ち合わせ用に『日本気象行政史の研究』を一通り目を通す。趣味の登山と旅行が大正・昭和初期における天気予報の需要を形成したと書いてあって目が溜まった。野鳥観察といい、自然地理によって趣味がいかにアフォードされるのかは最近ちょっと気になっている。

昼過ぎにシャワーを浴びて出かける。暑いなあ。水をごくごく飲む。

渋谷を経由して駒場へ。生産研でUTalkの打ち合わせだった。趣味研究に興味をもってくださって色々話した。東大出版から博論を出すには南原繁賞をとるか、執筆中に指導教官などに編集者を紹介してもらい見積もりをもらいつつ学術成果刊行助成を取るか、になるらしい。

打ち合わせの後はコロラドでAffinity Onlineを読んだり図書館で博論のアウトラインを書いたりした。趣味縁研究なるものがほとんどない状況で博論のタイトルに趣味縁という言葉を使うべきかどうか。趣味縁と言わないなら、趣味における社会関係について他に研究がないか、シリアスレジャーにおける社会的世界を軸に調べていた。

デイビッド・スコットが adult play group というテーマで論文を書いていたのは大きな発見だった。明日東工大の帰りに読む。

その後はフラメンコをして帰った。

杉山

七月三十日(火)

 最近は本当に暑い。大学に着いたときにはすでに一仕事終えた気分になっている。

 震災時の議論から都市と国家との関係を見るという作業をやっているのだがなかなか分量も多く骨が折れる。どこまでが精緻に読む場所で、どこからがそうではないのか判断をつけるのも難しい。『震災復興事業大観』のほうはビジュアルが美しいので色んな人に見せてみるという若干面倒くさいこともしているのだが、『帝都復興誌』のほうはだいぶ味気ない。とはいえ、復興計画が「都市計画に過ぎない」という批判を浴びていくのは興味深い。

 丸の内と築地で言えそうなことがあるんじゃないかという気にもなったが手にあまりそうだ。

 中川

七月二十九日(月)

8時半に起きる。夏は暑さと日差しで早起きになるのだ。sくんが出かける頃だったので一緒に駅まで歩く。見送って朝マックをした。『パワフル・ラーニング』を少し読んだ。プロジェクト学習への理解を深めていきたい。

眠いので家に戻ってきて二度寝する。起きたら11時だった。シャワーを浴びて支度してまた出かける。本郷へ。

研究室では事務仕事をしたり、趣味縁関連の文献を集めたりしていた。学校・会社から趣味へだったり、趣味から政治参加へだったり、そういう文脈で使われてきた概念だと認識する。自分はあくまで趣味にとって趣味縁がどういう意味があるのかを考える立場だ。これが少数派なのはちょっと不思議な気もするが、それだけ趣味や遊びは「オルタナティブ」として過度な期待を背負わされてきたのだろうな。そんな大したもんじゃないよ。

18時くらいに彼女と会って、上野駅で神戸行きの切符を買った。晩御飯を食べて、アイスを食べながら散歩して帰った。

杉山

七月二十七日(土)

 待機業務のため朝早く起きる。台風が来たらどうしようかと思っていたが、幸い天候は荒れていなかった。

 授業料免除に関する政策の不透明さに気をもんだり帝都復興の資料を読むなどしていた。昨日のラジオでどうやら「天気の子」が最新の東京映画らしいという話を聞きつけて夕方に池袋に見に行くことにする。7月にオープンしたばっかりの池袋グランドシネマサンシャインは人でごった返していて、土曜の夕方のレジャー感にだいぶ気圧されていた。満席のシアターは若い人中心だが、年配、家族連れ等々多様な年齢層である。

 東京をどのように見せるのだろうとということばかり考えていたのだけれど、船、バイク、線路から見える少しずらした東京の風景が新鮮で、1シーンだけ登場した赤羽の岩淵水門が嬉しかった。水門ブームが確実に来ている、多分。全体を通して都市だけじゃなく人の描写もウェッティで、人や都市とは全く別の論理をもつ水を処理しつつ、たえず変動する水との境界線のなかで人も都市も存在しているように感じた。

 中川

七月二十六日(金)

7時に起きてシャワーを浴びて出かける。田端から山手線で駒込南北線に乗り換えて大岡山へ。早めについたのでマクドナルドでマックグリドルを食べる。9時半に東工大に入ってインタビューの準備。10時からと14時からのインタビューを2本こなした。

個々人の研究テーマが比較的独立している研究室でも、工学系の文化があるからコアタイムを設定したり、ポスドクを中心とした毎週のチュータリンググループができていたり、ゼミと輪講を別々に開催していたりする。これだけ研究に対して濃密に時間をかけていたらよい成果も出るだろうなという気がする。社会科学でもこれぐらいのことしたい。研究中心の生活集団にあこがれをもった。

昨日、山内研のM1が中間発表を聞きに行って「他の研究室ってM2の7月でもこんなに研究進んでいないんですね・・・」と気づいていた。

仕事終わりに長塩に会って、洗足まで歩いてボンディのカレーを食べた。趣味研究の話が聞きたいとのことだったので、情報行動やサンドボックスゲーム、趣味を通した結婚の話をする。彼は何事も一元的なヒエラルキーにおける勝ち負けで判断するところがあるなと思った。ゲームの好みもそう。趣味の世界を「ピラミッド」として捉えるか「沼」として捉えるかは大きな違いがあると思う。

田端に帰ってきて眠くてしょうがなかった。一眠りしたあと、結婚式のために帰ってきたsくんと風呂に行った。

杉山